コインハイブは社会的に許容され得るのか考えよう

コインハイブ事件の裁判が決着を見ようとしているので、忘れないうちに考察しておく必要がありますね。

自分のホームページに、JavaScriptでコインハイブを埋め込んで、サイト閲覧者の端末CPUに負荷をかけて、仮想通貨モネロをマイニングさせた。そんな事案です。

法務省のホームページには「いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪について」というページがあります。そこを元に考えると、不正指令電磁的記録作成供用の要素としては、

正当な理由がないのに

実行の用に供する目的で

意図に沿うべき動作をさせず又は意図に反する動作をさせるべき不正な指令を

作成又は供用する

という形で分解できそうです。

問題になっているのは、コインハイブが不正かどうかというところに尽きると思います。

そうでなければ広告なんて意図に沿ってないし、勝手に動いて意図に反してますよ。でも不正じゃないというか、問題になったことないですよね。

グーグルとかAmazonがいくらデータをとっても、どんな広告が表示されたとしても、意図には沿ってないけど不正じゃなきゃオッケーなんでしょうか。考えてみましょう。

意図については、「個別具体的な使用者の実際の認識を基準として判断するのではなく、当該プログラムの機能の内容や、機能に関する説明内容、想定される利用方法等を総合的に考慮して、その機能につき一般に認識すべきと考えられるところを基準として判断する」そうです。

細かい動きはさておいて、ソフトの全体的な方向性が使用者の意図とあっていればいいということのようですね。

今更GAFAに文句言っても不便なだけですからね。この辺りは全体として方向性が同じと言えるという判断なのでしょうか。そうじゃないけど、誰も判断してないのでしょう。

意図に関しては、まさかそんなロジックだとは思わなかったとか、データの扱い方が思ったのと違ったとか、そういうのは問題ないんですね。まあ当然です。いろんな技術、考え方があるわけですからね。

この法律の保護法益は、電子計算機のプログラムに対する社会一般の者の信頼だと明記されています。パソコンのプログラムは基本的に不正なものではないという考え方で行きましょうということですね。

今回の論点は、ユーザの「意図」ではありません。広告もコインハイブもユーザの意図しないものであることは明らかです。

やはり論点は「不正な」の解釈ということになりますね。

では、不正なとはどういうことでしょうか。実際に電話帳のデータ盗まれるとか、明らかな被害があればそれは不正と言えるでしょう。

法務省の解釈では、「不正なものに当たるか否かは、その機能を踏まえ、社会的に許容し得るものであるか否かという観点から判断することとなる」と記載されています。

ぼんやりしてきましたね。「社会的に許容し得るか否か」ですよ。判断基準がぼんやりしているのは怖いです。

社会的に許容し得るか否か、決めるのは誰ですか?検事さんや裁判官が決めるんですか?その「社会」、偏ってませんかね…。

こういうのはネット社会で起こっているので、ネット民に聞いた方がいいのかというと、それも偏ってますね。

ソフトウェアに関わるエンジニア一般にアンケートとりたいですね。その社会なら技術的に理解している人達の集団ですからね。今回のケースについては適切な社会ではないでしょうか。

でもそういう柔軟なことしませんね、検事さんと裁判所ですからね。お堅いところですから。

では次の許容できるかどうかというとこです。ここが一番大事になってきましたね。

コインハイブを使うことで何が起こるのか、CPUを使ってマイニングの計算をすることで、実害はあるんでしょうか。

当然CPU使いますよね。パーセンテージで使用率を決めているということで、今回のケースでは50%の使用率のようですが、私がビットゼニーをCPU100%でマイニングしても、実感で遅くなるようなことはありませんでした。だからこの点は問題ないと言えるのではないでしょうか。これは誰でも簡単に実感できるのでやってみたらいいと思いますよ。ネットサーフィン、サクサクです。

CPU回せば電力が必要なので、電気代が必要になりますね。これも程度問題で、インターネット見ていれば電気代がかかるのは当然のことですね。

ビットコインマイニングには電力が必要になるということは周知の事実です。ネットサーフィンに比べてどのくらい電気代がかかるのかは、1つの判断基準としていいかと思います。そのページ見ただけで1アクセスあたり100円かかるとかだったらやりすぎて迷惑だから社会的に許容されないでしょう。

ですが今回については電気代の記載はありません。与えた損害が評価できないのでしょう。増加したCPUの分だけの電気代を計算することも難しいでしょう。

では今回それによって得られたモネロの量で検討してみましょう。約一カ月の間、日本円にして当時のレートで約1000円だそうです。1日あたり33円ですか。昼間に限って12時間としても1時間あたり3円としましょう。

コインハイブの仕様として7対3の割合で、7がサイト設置者の取り分ですから、これを踏まえても1時間あたり5円のマイニングですね。雀の涙。

マイニングに必要な電気代を考えると、日本国内ではペイしないという話があります。大幅に赤字でもないということですので、仮にトントンだとしたら、電気代は1時間5円の増加ということになり、この額は社会的に許容され得る額ではないでしょうか。

では、勝手にCPU使っている点についてはどうかというと、ドロボーのように思えますが、所有が移転してませんので窃盗ではないですよね。該当なしでいいんじゃないでしょうか。

最後になりましたが、勝手に電気を使われたと言う人いるんでしょうけど、電気は例外で窃盗の対象にされているのです。電気以外はダメ。このケースには当たりません。

はい、社会的に許容され得るのか。私は問題ないと思うのです。この基準は相対的なものです。実害はほぼないと言えるのではないでしょうか。

裁判官の判定はどっちですか?


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