後悔する若者

私は勉強そのものは嫌いではないのだ。いわゆる学校のお勉強はそこそこできた方だったのだ、少なくとも高校受験までは。

ところがやはり上には上がいるので、地区のトップ高に通いだしてから急に勉強がよくわからなくなり、授業にはついてけなくなり、あえなく浪人することになったのである。

思えばこれが失敗の始まりというか、初めての挫折と言える。もっと現役の時に頑張っていればよかった。というか、そもそも高校に受かった時点で目標を見失っていたと言えるだろう。大人になってどんなことを仕事にするかという視点が欠落していたのだ。

人生は短いようで長い。高校生の私には、大人になってからやりたいことなんて探す努力もしていなかったと言えるだろう。ただ何となく偏差値の高い大学を目指すという方向に進んでいた。

私の母方の祖母からは、医者にならないかと言われていたのだが、私の親はフツーの地方公務員。私立なんてとても通う金がないのだ。だから面談で希望を伝えても、今のままでは厳しいと言われ続けた。当然である。

じゃあって国公立の医学部が東大並みに難しいのは、とりあえず進学校に通う生徒ならわかっていることだし、自分がそこまでの学力がないことだってわかっている。

それでも希望だけは書いていたのだが、そもそも私には、医者になったとしてもその後の目標がなかったのだ。医者になって、一人でも多くの命を救う、とか、難しい病を治すために研究したい、とか、そういった具体的な目標がなかったのだ。

要するに、思い切って勉強にシフトするモチベーションが欠けていたのである。大人になってから知ったが、医者になるための勉強というのは、こと給料に関しては一番コストパフォーマンスが高いそうだ。医者が自分の子供を医者にしたがることもうなずける。

平均的なサラリーマンの生涯賃金が2~3億、医師はその倍といわれている。もっと稼ぐ人もいるだろう。なかなかひっくりかえせない差である。そのことがわかっていれば、金を稼ぐことが大変かということがわかっていれば、もうすこし頑張ることができたのではないだろうか。

もちろん、医師になる人というのは、お金じゃないところにモチベーションを持っていることのほうが多いだろう。また、そうであってほしい。少なくとも高校で同じクラスにいた医学部志望の優等生たちは、お金に目がくらんでいるような人ではなかった。

アラフォーといわれる今になって思うのだが、大した給料ももらえずに、毎月の支払いにおびえながら暮らすのと、医師として地域医療の担い手になりながら、汗水たらして高い給料で働くのとどちらが幸せなんだろうか。

もう一年浪人して、死ぬ気で医者を目指してもよかったのではないかと思う。現に河合塾の寮生活を一年過ごして、そういう人と出会い話したこともあるが、2浪はきつそうだったけれど、今になって思えばもっと頑張れたと後悔である。

医者になれなかったところでどんな道があるのだろうか。21世紀は環境と情報の世紀といわれていた。私は地球環境を守るためにできることがないかと考えて農学部に入ったのだが、グローバルな視点で活動できるものではなかった。いや、そういう視点で物事を見れていなかった。

たまたまwindowsが世に出たタイミングだったので、パソコン自体にはかなり詳しくもなったし、インターネット黎明期にいろいろなサイトを見る機会もあったのだ。しかしそれを仕事にしようと考えたのは、いざ就職活動を始めてからのことだった。

就職のタイミングはいわゆる超氷河期という時期で、大学院の修士課程終了のタイミングで、同級生からフリーターが何人も出た。社会的な損失だと思う。私はラッキーなことに、通信インフラを持つ会社のSEか、大手電機メーカー系のSEを選ぶことができたのである。

偏差値至上主義の受験戦争でもまれた私は当然、東証一部上場企業の電機メーカー系SEの道を選んだ。が、実態はIT土方であり、超過勤務の嵐であった。社員は途中で脱落する人も多く、メンタルやら体やら壊してつぎつぎ退職するような職場であった。

仕事はあるけれど、手が足りない。仕事取ってくるのはいいけれど、やれる人的資源が不足していたのである。属人的な業務内容、一部の人間に仕事が偏り、午前様の連続。余裕がないからパワハラも横行していた。かるく地獄であった。

昔はパソコンなんてオタクのツールであった。パソコンに詳しいというと気持ち悪がられていて、女子にはモテない趣味だったのである。しかし今やインターネットなしの生活はあり得ない。すべての家電がネットにつながる時代なのである。

先進国の中で日本は幸せの度合いが低い国だという調査結果が出ているそうだ。自由度が低く、他人に寛容でない国。賃金の上昇も先進国で唯一マイナス。人口現象段階に入り、先の見通しが危うい国だ。かつて日本は豊かな国と言われたが、東南アジアと比べても、そこまで給料は高くない。その差を詰められているのである。

若者たちよ。日本にとどまってはいけない。世界へ飛びたつのだ。変化を恐れる日本にいつまでもいるべきではない。アメリカに、ヨーロッパに、どんどん進出しなければいけない。

そういう意味で若いうちから英語を使えるようになる必要があると思う。求められているのは、英語+アルファの能力である。英語+プログラミングなんて相性抜群だろう。GAFAに本気で就職するならその道が王道だろうか。

イチローが引退会見で語っていた。若者たちは、なるべく早く熱中できるものを見つけてほしいと。熱中できれば壁に向かって挑むことができるのだ。

私は熱中できるものが見つけられなかった。今でこそこうしてブログを書くことができるし、動画で自己表現することができる時代だが、もっと若いうちに同じようなチャレンジができたらと思うし、今の若い人たちがうらやましい。インターネットがこんなにも世の中を楽しくしてくれている。

その環境に長い時間いられるということが、うらやましくてたまらない。私はインターネットが、パソコンが好きなのである。だからこれからもITになるべく直接かかわる仕事がしたいという気持ちでいる。

若い人たちもどうか、自分を信じてチャレンジし、熱中できるものを見つけてほしい。そして壁を乗り越えて、自分で生きていく力を身につけてほしいと思うっている。

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